東京地方裁判所 平成6年(行ウ)252号 判決 1997年4月14日
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
理由
【事実及び理由】
第一 請求
被告は、原告に対し、原告が被告の設置する東京大学教養学部に助手として勤務しうる法律関係にあることを確認する。
第二 事案の概要
本件は、東京大学の助手であった原告が、同大学から平成六年三月三一日限り停年退職した旨の通知を受けたが、同大学において助手の定年制について規定する「東京大学教官の停年に関する規則」ないしその原告への適用は違憲無効であると主張して、原告が東京大学教養学部に助手として勤務しうる法律関係にあることの確認を求めた事案である。
一 争いのない事実等(以下の事実は当事者間に争いがないか、末尾掲記の証拠によって認められる。)
1 原告
原告(昭和九年一月二〇日生まれ)は、昭和四一年四月一日付で助手として被告に採用され、同日以降被告の設置する東京大学教養学部の助手として勤務していた。原告は、平成六年一月一九日に満六〇歳に達した。
2 停年退職の通知
原告は、平成六年四月一日、当時の東京大学教養学部長蓮実重彦から、「平成六年三月三一日限り停年により退職した。」とする東京大学総長名の文書交付により、停年退職を通知された。
3 東京大学における停年規定
国立大学の教員の停年については、教育公務員特例法(以下「教特法」という。)八条二項により、各大学管理機関(同法二五条一項二号により「評議会の議に基づき学長」と読替え)が定めるものとされており、助手についても、「教員の職務に準ずる職務を行う者」として、右規定が準用されている(同法二二条、同法施行令二条一項)、これを受けて、東京大学においては、同大学評議会の議に基づき同大学総長が、「東京大学教官の停年に関する規則」(以下「本件停年規則」という。)を定めている。本件停年規則二条一項は「教官の停年は、満六〇歳とする。」、同条三項は「教官の停年による退職の時期は、停年に達した日の属する学年の末日とする。」、三条は「東京大学に勤務する助手の停年については、前条の規定を準用する。」と定めている。(なお、東京大学においては、「定年」という用語につき、教特法の文言に従い「停年」という文字を使用している。)
4 本件停年規則改正経緯及び手続
(一) 国家公務員法の改正により昭和六〇年に定年制が実施される以前から、国立大学の教員については教特法等において定年について規定されており、東京大学においては、本件停年規則において、教授、助教授及び常勤講師の定年を六〇歳と定めていたが、助手については、右規則に定めず、「東京大学職員の停年に関する内規」(以下「停年内規」という。)において、助手の定年を満六〇歳と規定していた。その後、昭和五六年の国家公務員法の改正により、昭和六〇年三月三一日から国家公務員に関する一般的な定年制が実施されることになったことを受け、昭和五九年三月一三日開催の東京大学評議会において、職員等について定年を規定していた停年内規を廃止する一方、教特法が準用される助手については本件停年規則の中に三条として右3記載のとおり規定する旨の本件停年規則一部改正案が可決承認され、同日付けで総長の決裁を経たのち、昭和六〇年三月三一日から施行された。
(二) 「東京大学評議会規則」二条によれば、東京大学評議会は、総長、各学部長、各学部の教授二名、各附置研究所長、大学院各研究科委員会委員長、先端科学技術研究センター長の各評議員によって組織される。そして、同規則二条二項、「東京大学評議会内規」一条一項によれば、評議会構成員である各学部の教授二名は、当該学部教授会において選挙するとされ、被選挙権者は教授、選挙権者は教授・助教授及び教授会構成員である専任の講師である。従って、助手は、被選挙権も選挙権も有しない。
二 争点
本件停年規則ないしその原告への適用は有効か
三 原告の主張
1 平等原則(憲法一四条・国際人権規約B規約二六条)違反
憲法一四条一項の平等原則に違反する不合理な差別であるか否かを判断する合憲性の審査基準としては、精神的自由もしくはそれと関連する問題について平等原則違反が争われる場合は、立法目的の面からみてそれが必要不可欠なものであるか否かという点と、立法目的達成手段の面からみてそれが是非とも必要な最小限度のものか否かという両面から合憲性の是非を判断することが必要である。本件停年規則は、原告が東京大学において教育・研究者として生活を継続しうるか否かについての幸福追求権や学問の自由等の精神的自由並びに自己のもつ個性を全うすべき場として、個人の人格的価値とも不可分の関連を有する教育・研究者としての職業活動の自由(労働権)に関連して平等原則が問題とされているケースである。したがって、本件停年規則の合憲性審査に当たっては、本件停年規則の制定目的が必要不可欠な公益の実現にあるといえるか否かという点と、原告ら助手に適用される六〇歳停年退職という手段が「本件停年規則」制定の目的を達成する手段として是非とも必要な最小限度のものであるといえるか否かという点についてそれぞれ判断する必要がある。
被告は公務員一般に定年制を定める目的として、二点を主張するが、後記被告主張の<1>の目的は、原告のように専門的知識や経験が必要とされる大学の教育・研究者で、知的能力も体力もある者にはそもそも当てはまらないし、同<2>の目的であれば、むしろ定年制など設ける必要はない。大学教員には、高度の専門的知識と研究対象に対する深い洞察力を必要とされるのであるから、このような特殊性を有する大学教員の個人差を無視して現業労働者を含む公務員一般と同様の能率性を要求すること自体間違っている。したがって、大学の教育・研究者を対象とする本件停年規則制定の立法目的には、公益実現のため必要不可欠性があるとはいえない。
本件停年規則は、個々的に任意退職を求める退職勧奨等の前提措置が全くとられることなしに、助手等が満六〇歳に到達したことの一事のみをもって強制的に退職させる制度となっている。しかも、同じ六〇歳で定年退職を迎えても、教授・助教授等は他の国立大学や私立大学への天下りがほぼ保障されているといえるが、原告のような助手は、定年退職後における他大学等への就職が著しく困難である。また、加齢による知的能力ないし体力の老化には個人差があり、特に日本のような高齢者社会にあっては、高齢者の職業能力は、六〇歳を過ぎてもほとんど衰えることがないといわれている。したがって、本件停年規則は、原告のように、若年の研究者に比較しても知的能力ないし体力面において全く遜色がなく、かつ、他大学等への再就職の困難な助手に対しても無条件に適用される点において、必要最小限度の手段の範囲を著しく逸脱するものとして憲法一四条一項に違反し効力を有しない。
2 本件停年規則改正における重大かつ明白な手続的瑕疵
(一) 労働条件(勤務条件)法定主義(憲法二七条二項)・国会中心立法の原則(憲法四一条)違反
東京大学においては、停年内規において助手の六〇歳定年制が定められていたが、停年内規には強い法的拘束力はなかったため、助手は、六〇歳を過ぎても自発的に依願退職の意思表示をしない限り、強制的にその地位を喪失させられることはなかった。また、東京大学の教授や助教授にとっては、定年退職後、他大学に転職先を見つけることは極めて容易であるが、助手にとっては、他大学に転職先を見つけることは著しく困難である。したがって、停年内規から本件停年規則に改められたことは、助手にとっては重大な不利益をもたらし、労働条件の一方的な不利益変更として、特段の合理制がない限り許されない。
労働条件法定主義の立法趣旨は、<1>労働者の人たるに値する生活を保護するために、最低限の労働条件を法律で定めて使用者に遵守させるということであり、<2>労働条件を法律で制定するということは、その適用を受ける労働者が国民=主権者として議会制民主主義の手続である選挙等を通じて、自らの代表を国会へ選出し、国会における民主的な審議を経てこれを定めるということにほかならない。したがって、議会制民主主義の趣旨からは、労働条件法定主義の例外が認められる場合(例えば行政庁に政令・省令の制定を委任するような場合)であっても、国会で制定された法律にその根拠規定が必要とされるほか、その政令・省令の適用を受ける労働者にも、何らかの形式によって意見反映の機会が保障されていなければならない。
東京大学において、助手は、評議員の被選挙権、選挙権を有していないため、本件停年規則を含む「規則」制定に関与することができない。とりわけ、本件停年規則の改正については、助手に対して事前に告知がなされなかったため、助手には意見を表明する機会すら与えられなかった。つまり、助手に対して重大な労働条件の不利益変更をなすに当たり、助手自身には事前に参加の機会も自己決定の機会もまったく保障されていなかったのである。これは、憲法二七条二項、同法四一条と法の大原則である信義則ないしデュープロセスに違反するものであるから、本件停年規則改正手続には重大かつ明白な手続的瑕疵があり、助手である原告に対しては法的効力を有しない。
(二) 大学の自治保障の原則(憲法二三条)違反
大学の自治は、研究・教育従事者等の内部における運営面における民主主義的手続の履践も要請していると解される。東京大学においては、昭和四四年一月一〇日付け確認書において、助手も含めて、すべての大学構成員が大学の自治の運営主体であることを明言している。以上から、東京大学における大学自治の運営主体である助手についての六〇歳定年制の根拠規定である本件停年規則の改正という重大な決定を行うに際しては、最低限度、助手からもその意見を聴取し、意見を述べる機会を与えるという民主主義的な手続を保障すべきであったにもかかわらず、本件停年規則改正手続はこのような手続に欠けるものであるから、本件停年規則は、大学の自治保障の原則(憲法二三条)に違反するという点において重大かつ明白な手続的瑕疵があるものとして、助手である原告に対しては法的効力を有しない。
四 被告の主張
1 本件停年規則の有効性
公務員に定年制を定める目的は、<1>職員の新陳代謝を計画的に行うことにより組織の活力を維持し公務の能率の維持増進を図ること、<2>原則として所定の年齢までの職員の勤務の継続を保障して安心して職員を公務に専念させることにある。また、本件停年規則の定める六〇歳定年制は、現行の高年齢者等の雇用の安定等に関する法律四条及び平成一〇年四月一日施行の高年齢者雇用安定法四条の基準をいずれも満たすものであり、その目的及び内容において無効のそしりを受けるものではなく、本件停年規則は有効である。
憲法一四条、一三条、二三条は合理的理由に基づく人権の制約を否定するものではなく、右公務員の定年制度の目的や、大学の教員及び助手の定員数に限度があること、大学の教員及び助手の年齢構成上のバランスを保つ必要があることなどに鑑みると、一定の年齢に達した後は個別の当該教員ないし助手の能力の程度のいかんにかかわらず、一定の年齢に達したことをもって一律に退職とすることは、十分な合理性を有する。また、東京大学の教授、助教授、講師の定年年齢は、助手と全く同一の六〇歳であり、助手を差別的に取り扱ったものでもないし、高年齢者雇用安定法の基準も満たしている。したがって、本件停年規則は、憲法一四条、国際人権規約B規約二六条、憲法一三条、二三条に違反するものではない。
2 本件停年規則の改正手続の適法性
「東京大学評議会内規」六条一項六号は、教官の停年に関する規則の制定を、東京大学評議会の審議事項と規定している。これは、教特法八条二項、二五条一項二号及び同法施行令二条一項により、助手の停年については、評議会の議に基づいて学長が定めるものと規定されていることに基づいている。本件停年規則は、昭和五九年三月一三日開催の評議会において可決承認され、東京大学総長の決裁を経たものであるので、同規則の改正手続には何らの瑕疵もなく、同規則が有効なものであることは明らかである。
法は、国立学校設置法一三条、「国立大学の評議会に関する暫定措置を定める規則」二条一項において、評議会の構成員の範囲いかんについて、大学の自治に基づいて、各大学の自由な判断に委ねているものと解されるのであって、大学教官の人事を各大学の自治に任せたことが、助手に対し大学教官の人事の決定手続に参加する機会を保障することを当然の前提としていると解することはできない。助手は、教授及び助教授の勤務を助ける(学校教育法五八条)とされているとおり、職務区分が異なるので、評議会の構成員とされず、評議員の選挙権も有しないとする右規則が不合理であるということもできない。
さらに、東京大学においては、助手の定年が突如として制定されたのではなく、国公法の定年制度が導入される以前から定年制が設けられており、本件停年規則は、助手の定年年齢についても、停年内規の想定していた六〇歳をそのまま踏襲する形で規定したものである。つまり、本件停年規則の一部改正は、国公法の改正を受け、単に規則の体裁を改めたものに過ぎず、助手に不利益な内容上の変更を伴うものではなかったし、定年年齢について、助手を差別的に取り扱ったものでもないから、右改正について助手の意見を聴取しなかったことも不合理ではない。
憲法二七条二項にいう「勤労条件に関する基準」とは、「労働条件の最低限の基準」を意味し、同規定は、労働条件の最低限の基準についてはこれを法律で定めることを要するとしたものであって、定年制を含む労働条件一般を法律で定めなければならないとしたものではないから、教特法八条二項、二二条及び同法施行令二条一項の各規定、あるいは、右規定に従い東京大学の教員(助手を含む)の定年を本件停年規則をもって規定していることは、憲法二七条二項に違反するものではなく、同様に同法四一条に違反するものでもない。したがって、憲法二七条二項、四一条も、助手が大学教官の人事の決定手続に参加する機会を保障されている根拠となり得ず、原告の主張には理由がない。
第三 争点に対する判断
一 平等原則(憲法一四条・国際人権規約B規約二六条)違反の主張について
前記のとおり、教特法八条二項、二二条、同法施行令二条一項の各規定により、国立大学の教員及び助手について定年制が実施され、本件停年規則も右各規定に基づくものであるところ、原告は本件停年規則の原告への適用は、憲法一四条一項、国際人権規約B規約二六条に違反する旨主張するので、この点について判断する。
憲法一四条一項は年齢による差別を明示的には禁じていないが、年齢による差別的取扱いが合理性を欠くものであるならば、右憲法条項違反となることはありうるものと解されるので、本件停年規則による定年制が合理的なものであるか否かについて検討する。昭和六〇年以降、大学教員以外の国家公務員についても原則六〇歳定年制が実施されているところ、公務員に定年制を定める目的は、第一に、職員の新陳代謝を計画的に行うことにより組織の活力を維持し、もって公務能率の維持増進を図ること、第二に、所定の年齢まで職員の勤務の継続を保障して、安んじて職員を公務に専念させることにあると考えられる。そして、終身雇用制・年功制といった長期勤続雇用システムのもとにおいては、右目的には一応の合理性が認められるというべきである。また、国立大学の教員及び助手についても、定年までの長期勤続が保障されている一方、その定員数に限度があり、能力が減退した者の交替、若年者の採用の必要性も認められるし、教員及び助手であっても、一般的には年齢を経るにつれ、知的能力ないし体力が老化することは他の者と変わらないのであるから、定年制について、一般公務員と別異に取り扱わねばならない理由はない。また、本件停年規則の定める六〇歳定年制は、現行の高年齢者等の雇用の安定等に関する法律四条の基準を満たしており、一般の公務員の定年年齢とも等しく、その内容においても、合理的なものと認められる。
したがって、国立大学の教員及び助手について定年制を実施する前記各規定及びこれを受けて制定された本件停年規則が憲法一四条一項、国際人権規約B規約二六条に違反するということはできない。
原告は、本件停年規則の平等原則違反審査基準としては、精神的自由もしくはこれと関連する問題について平等原則が争われる場合に適用される審査基準を用いるべきである旨主張するが、東京大学において教育・研究者として生活を継続する権利というようなものは認められず、もとより、本件停年規則による退職が憲法上権利として保障されている精神的自由権を侵害するものでもないから、本件が、精神的自由もしくはこれと関連する問題について平等原則が争われている場合であることを前提とする原告の主張は採用できない。また、大学教員や助手の他大学への再就職の難易の差については、当該本人の能力・業績の評価等多数の要因が考えられるのであって、助手の定年後の他大学への再就職が事実上難しいとしても、本件停年規則が合理性に欠けるとはいえない。
二 本件停年規則改正手続の適法性
1 前記のとおり、本件停年規則は教特法八条二項、二二条、同法施行令二条一項を受けて、東京大学評議会において改正案が可決承認され、同大学総長の決裁を経て定められたものである。そして、国立学校設置法一三条は、評議会の構成については規則に委任しており、右委任に基づく「国立大学の評議会に関する暫定措置を定める規則」二条一項は、評議会は、学長、各学部長及び教養部長、各学部及び教養部ごとに教授二人並びに各附置研究所の長をもって組織すると規定し、同条二項後段は、当該大学の事情により、評議会の議を経て、附置研究所の教授、附属図書館長、附属病院長、短期大学を併設する大学にあっては短期大学の教授その他重要な職にある職員を評議員とすることができると規定しているところ、これに基づき、前記のとおり、「東京大学評議会規則」二条により、東京大学評議会は、総長、各学部長、各学部の教授二名、各附置研究所長、大学院各研究科委員会委員長、先端科学技術研究センター長の各評議員によって組織されている。よって、本件停年規則は、教特法、国立大学設置法等の右各規定に基づいて改正されており、手続的瑕疵は認められない。
2 原告は、本件停年規則改正手続は、憲法二七条二項、四一条に違反する旨主張するが、憲法二七条二項、四一条が、使用者が労働者に対し具体的な労働条件を定める際に、その適用を受ける当該労働者の意見反映の機会を保障しているとする原告の主張は、当裁判所の採用するところではない。
なお、昭和六〇年以後、国家公務員法八一条の二ないし八一条の五により、一般の国家公務員についても原則として六〇歳の定年制が実施されていること、東京大学においては、国家公務員法の定年制が導入される以前から定年制が設けられており、助手についても、停年内規により六〇歳定年制が実施されていたのであり、本件停年規則は、助手の定年年齢について、停年内規の規定していた六〇歳を踏襲したにすぎないこと、東京大学の教授、助教授、講師の定年年齢と助手の定年年齢とは全く同一であることからすれば、本件停年規則の改正が、助手に重大な不利益をもたらしたとはいえず、助手の意見を聴取しなかったからといって、本件停年規則改正手続が信義則に違反しているとも認められない。
3 また、原告は、憲法二三条の保障する大学の自治は、研究・教育従事者等の内部における運営面における民主主義的手続の履践も要請しており、本件停年規則改正手続は憲法二三条に違反する旨主張するが、憲法二三条の学問の自由に由来する大学の自治の根幹は、外的勢力からの干渉を排して、自主的な研究・教育を行うことにあり、大学の自治の運営手続については、基本的に大学の自律に委ねられていると解するべきであって、原告の右主張は採用できない。また、助手は、教授及び助教授の職務を助ける(学校教育法五八条)もので、教授・助教授とは職務が異なり、憲法二三条の保障する大学の自治が、助手に対し大学教官の人事の決定手続に参加する機会を当然に保障しているとはいえないこと、定年制は、一定年齢の到来によって一律に退職の効果が生ずるものであって、特に特定個人の排除を意図するなど特段の事情のない限り、研究者に対する任命権者または外部勢力による圧力干渉とは直接結びつかないから、右憲法で保障される大学の自治の問題とはいえないことからしても、本件停年規則の改正に当たって助手の意見聴取等がなされなかったことは、なんら憲法二三条に違反するものではない。
三 結論
以上によれば、原告の請求は理由がないから、主文のとおり判決する。
(裁判官 白石史子)